こんにちは。骨折の中でも頻度の多い脊椎圧迫骨折を一度は目や耳にしたことがあると思います。みなさんは、脊椎圧迫骨折(多くは骨粗鬆症によるものであるため、骨粗鬆症性椎体骨折 ( osteoporotic vertebral fracture ; OVF ) と呼ばれています)の手術加療に関して迷ったり、悩んだりしたことはありませんか?今回は、OVFの治療方針を考えるうえで重要な「3 colomun theory」をご紹介致します。
3 column theoryって何?
脊椎の安定性と損傷のパターンを分類するため、Francis Denisが提唱した理論です。この理論は、脊柱を縦方向に3つの「柱(column)」に分けて、それぞれの損傷が脊椎の安定性に与える影響を評価します。
1. 3つの柱(column)の定義
anterior column
構造:椎体の前方1/2、椎間板の、前縦靭帯
役割:前柱は荷重の分散と安定性の一部を担います。衝撃や圧迫の力が集中しやすい部分です。
middle column
構造:椎体の後方1/2、椎間板の後縁、後縦靭帯
役割:中柱は脊柱管(神経の通り道)の前壁を形成し、安定性を支える重要な構造です。損傷があると神経症状が出やすく、脊椎の不安定性を引き起こします。
posterior column
構造:椎弓根、椎間関節、椎弓、棘突起、後方靭帯複合体(黄色靭帯、棘間靭帯、棘上靭帯)
役割:後柱は脊椎の可動性と安定性の両方に関与し、外力に対する支持を担います。
2. column安定性の評価
3柱のうち2つ以上が損傷されている場合、脊椎は不安定と見なされます。不安定性があると、脊髄損傷や変形のリスクが高くなります。また、神経障害のriskは「 moddile colomun 」の障害でより大きくなります。後壁損傷(特に後縦靭帯の破綻を伴うもの)により脊髄や神経根が圧迫される可能性が高まり、麻痺や感覚障害を引き起こすからです。
疾患ごとの主な損傷パターン
圧迫骨折
損傷部位:anterior column
特徴:一般的に安定した骨折。anterior columnのみなら保存的治療(コルセット装着や安静)で様子をみていくことがしばしば。骨粗鬆症に対する薬物療法の導入を検討します。時に、middle column(後壁の膨隆)やpoaterior column(椎弓根の破綻)の損傷も認めることがあるので注意が必要です。
破裂骨折 ( burst fracture )
損傷部位:anterior columnとmiddle column。( ± posterior column )
特徴:高エネルギー外傷を契機として発症する。その受傷機転から、column損傷のパターンは多岐にわたります。破裂骨折 ( burst fracture ) の定義が後方骨片の存在があることなので定義上は middle column の損傷は必須です。棘突起や椎間板などの軟部組織までしっかり評価していきます。
屈曲‐転位型 ( flexion-distraction fracture )
損傷部位:middle columnとposterior column
特徴:これも交通事故や高所からの落下などの高エネルギー外傷による受傷を背景とした骨折です。椎体の後方で骨折や脱臼が起き、不安定なため手術が必要になることが多いです。
脱臼骨折
損傷部位:3‐column すべて
特徴:極めて不安定で、脊髄損傷のリスクが高いことが多い。骨傷だけでなく、椎間板や靭帯などの軟部組織の損傷を見落とさずしっかりと評価することが重要です。不安定性であるため、手術での整復・固定が必須です。
3 column theoryの限界と改良
Denis の3-column theoryは、その簡便さと臨床的有用性から広く受け入れられていますが、近年の研究により、さらなる改良や新しい分類法の提案がなされています。これらの新しい知見を踏まえつつ、個々の症例に応じた適切な評価と治療選択が重要です。
Su の 3-column theory
椎体を3等分し、椎弓根の内側縁に沿って平行線を引く新しい分類法です。
AO分類との統合
Type A(圧迫)、B(伸展)、C(回旋)の3タイプに大別し分類。さらに細分化され、合計27種類の損傷パターンを定義しています。
まとめ
Denis の 3-Column Theory は、椎体骨折の損傷部位と脊椎の安定性を評価する上で非常に重要な理論です。脊柱の安定性の評価だけでなく、治療方針の決定にも大きく寄与します。特に middle column が関与するかどうかが、神経症状や手術の必要性の判断において重要な要素となります。